■“ルネサンスの怪物”チェザーレ・ボルジア 「歴史はボルジア家によって、十五、十六世紀の破廉恥を描き出すための画布として利用された」 ―――ロードン・ブラウン 16世紀初頭、ルネッサンス華やかなりし頃、文化的には超一流であったが 小国が乱立した以外軍事の面では非常に危うい立場にあったイタリアを統一する野望に燃えて 突き進んだ“悪名高き”ボルジア家の庶子。 ボルジア家当主の父ロドリゴはやはり陰謀と毒殺によってローマ法王の地位を手に入れた曲者であるが、 チェザーレはこの親父とグルになって政敵を何人も毒殺し、或いは攻め滅ぼして、 毒薬と結びついて世間に知られる、禍々しいボルジア家の名を一挙に高からしめた。 大目的の為には手段を選ばず、自らの手を血みどろに汚すこともなんとも思わなかった人物で、 その野望の為には実の妹ルクレツィアも政略結婚の駒に過ぎず、ルクレツィアは何度と無く 政略結婚させられてはその度に用済みになった夫を暗殺されたり、追放されたりを繰り返した。 ……しかし一説では、チェザーレは妹のルクレツィアに恋着していて、それがために ルクレツィアの夫や愛人になると命の危険があるのだとも当時から噂になっていたという。 しかし、1503年、権威の要であった当主ロドリゴ(法王)が急死すると、さしもの風雲児にも 年貢の納め時がやってくる。 父とともに病に倒れていたチェザーレはその隙を敵に衝かれ捕らえられた。 その後スペインに流され、脱走し、最後は一傭兵隊長として戦死したという。 なお、殺人の悪名ばかりではなく、彼らボルジア家の人間は同時に洗練された文化や芸術の保護者でもあった。 チェザーレも、自軍の技師長にレオナルド・ダ・ヴィンチを招いたり、マキャベリやミケランジェロと 親しく友達づきあいをしていたりする。 おそらく何時の時代にも、文化の洗練と殺人の洗練とは並行して達成されるのである。 毒薬への狂熱は何もボルジア家のみのものではなく、当時のイタリア上流社会にあって、 極めて一般化した風潮でもあった… ・性格 傲岸不遜、自分なら何でも成し遂げて見せると豪語する性格で、 「オレが天下に背こうとも天下の人間が俺に背くことは許さん」を地で行く人物。 であるが、同時に才覚ある人間に対してはそれを認めて用いる度量は持っている。 その点、最近よくみるキャラで言えば曹操に近いものがあるかもしれない。 しかし、手口はこちらのほうがかなり陰険である。 同時に、かなりのシスコンであり、しかも妹に対してツンデレる。 逆に妹のほうはなんかちょっとヤンデレている。 でも結局相思相愛。死ねばいいのに(既に死んでます) ・方針(聖板戦争での立ち回り方) 自分が直接闘ってもあまり勝ち目は無いので、基本的にはマスターを上手いこと生き延びさせて 漁夫の利を取りに行く方針で立ち回ろうとする。 設定的には何か権力や公的機関の後ろ盾(或いは使命)があるマスターが理想的か。 他のマスターと同盟を結んだり、裏切ってみたり、裏切りを引き起こしてみたり、 曖昧な情報で躍らせてみたり。 ・戦闘スタイル(強み・弱点含む) 直接闘う場合はレイピアと魔術の組み合わせでヒット&アウェイといった感じだが、 元々君主であって戦闘が得意なわけではないため基本的には戦闘そのものを避けて通る。 逆に言えば、闘う時には必勝の手が打ってあるということである。 他の参加者が闘っていない時にひそかに攻撃しているのが基本スタイル。 ・戦闘時相性の悪い相手・良い相手(他の参加者でも、〜〜な相手でも可) 当然ながら思惑抜きで真っ向から突っ込んで来る相手は苦手。 話が通じにくい狂ったようなキャラも苦手である。 反面、交渉が通じたり思想を持ったりしているキャラに対しては 政治的説得力がフルに発揮され(倒せるわけではないものの)有利に話を進められる。 また、一見すると毒が効かない相手には弱いように思われるが、 その場合はマスター先に狙う(毒を盛る)手もある為さほど問題は無い。 ・性格的に相性の悪い相手・よい相手(同上) 単純に正義感の強いタイプには悪または敵と見なされたり、 そこまで極端でなくても嫌悪感を示されることは大いに考えられる。 ただ、そういった相手にはチェザーレに代わってルクレツィアが当たることによって敵対を避けたり 味方につけたりすることもできる(ルクレツィアは基本的には善性が前面に出るタイプ)。 戦略的にはD4-3のナイチンゲール女史などは能力的に味方にしておきたいキャラであるが 性格の問題で壁は高いかもしれない。 相性とは関係ないが、上流階級に出入りしていた(と称する)サン・ジェルマン伯爵辺りは チェザーレと面識があったりするかもしれない。 ・最後のサーヴァント自身から一言! 「私が愛するものがあるとすれば イタリアだ、ルクレツィア」 「大目的のために手段は選ばん それが君主の条件だとフィレンツェから来たマキャベリが言ってくれたがな、レオナルド…」 「お前も私も 持てる才能の全てを吐き出さずにはいられない人間なのだ 善も悪も 最高に発揮される時代なのだ!」 「フフフ… 麗しきイタリアに復讐されたか 俺としたことが… なあルクレツィア…」 ・その他自由スペース <カンタレラ> ボルジア家と言えば毒薬「カンタレラ」であって、後世にはその名も「ボルジア家の毒薬」という映画も作られたほどであるが、 それが実際にどのような性質の毒物で、いかなる調合により製せられていたのかという実体は現代に至っても知られていない。 ブルクハルトも「雪白な味の良い粉薬」などと曖昧に表現する以外にはっきりしたことは伝えていないが、 一説にはプトマイン(屍毒)ではないかともいう。 古来のプトマインは専らヒキガエルの肺から採取されていたが、彼らは逆さにぶら下げて撲殺した豚の内臓に亜砒酸を加え、 これを腐らせて乾かすか、さもなければ液体にして精製したという。 星野之宣のやはり「ボルジア家の毒薬」という短編では、ローマのボルゴ宮の地下室に、ローマで疫病が流行るたびに 密かに集められた病害で死んだ人間の死体が大量に詰め込まれていて、その腐り行く死体の海で熟成される 病毒こそがカンタレラの正体であった。 それはともかく、この毒薬はラテン語でヴェネムス・アテムペラトゥム(緩効性の毒)などとも言うように、 きわめて長期にわたって徐々に効果を発揮する場合もあれば、調合法によっては迅速に人命を奪う場合もあったという。 ヴィクトル・ユゴォの「ルクレチア・ボルジア」に拠ればこんな調子である。 「そうだとも、ボルジア家の毒薬は、彼らの望みのままに、相手を一日で殺すことも、一月で殺すことも、 或いは一年がかりで殺すこともできるのだ。酒に投入すれば味が良くなって、つい舌鼓を打って飲み干してしまい、 酔った気になっているうちに死んでしまう。場合によっては、急にだるくなり、肌が皺立ち、目が落ち窪み、 髪の毛が白くなり、歯が抜け出す。もう歩いていられず、地面を這うようになる。呼吸が苦しくなって、ぜいぜい息を切らす。 笑うことも眠ることも出来なくなって、昼日中でもぶるぶる悪寒がする。そしてしばらく生死の境をさまよってから、 死ぬ時になってようやく、半年前か一年前に、ボルジア家で酒を飲んだことを思い出す…」 …これだけ効果が様々だとなんだか一種類の毒ではないのではないかという気がしてしまうが、ともかく 世間ではこう言うのである。 「カンタレラ」の語源についてはいろいろな説がある。 例えば、毒物学者のフランダンなる人物の意見によると、「カンタレラ」とはイタリア語で「歌を歌わせる」即ち 「強請る」という意味であり、毒を飲ませて「金品を巻き上げる」というニュアンスがアルのだそうである。 この他、「カンタレラ」は「カンタリス(ハンミョウの粉末、これは強精剤だという)」から由来しているとも言うし、 ラテン語の「カンタレルス(小さな杯)」を暗示しているというような説もある。 ともあれ、この「カンタレラ」で一時代を築いたボルジア家にとどめを刺したのもまたカンタレラであったという。 1503年の八月、チェザーレと父の法王は枢機卿アドリアノというものに招かれて、彼の邸に食事をしにいった。 あたかも夏の盛りであったから、喉が渇いた2人は邸に着くとすぐに、冷たい水を貰って飲んだ。 このコップに毒が盛られていたのである。 チェザーレは九死に一生を得たが、父の法王は八月十八日、そのまま帰らぬ人となった。