元々カル・カ・シェオブの一族は星の代弁者『星霊媒』として代々地球意思に仕え、大地の声を人に伝えてきた。だが、ある日を境にして明らかに地球とは別の異質な声が割り込むようになり、数々の膨大な情報を一方的に送りつけ始める。それらは地球とは別の、遥か遠き星からの呼びかけであった。送られてくる情報『アナザーレコード』はあまりに異質なものであり、長きに渡って受信し続けた彼らの脳と肉体は変容し、やがて一族は姿形はそのままに、地球生命とは別種の生物と成り果てる。彼らは表向き地球意思の従僕を装いつつ抑止力を欺き、異星勢力の尖兵となって暗躍するのだ。
占星術師の中には超短期的に因果律に干渉し、運命を変える『星の導き』といった術を使える者もいる。カル・カ・シェオブは星の導きは使用できないが、星々の間に満ちる未知のエネルギーを操る魔術を修得している。
反地球の目的は大量の生命力やマナを得て、存在濃度を高める事にある。これまでカル・カ・シェオブは『離魂の儀』によって地球の持つ生命エネルギーを少しずつ奪い、反地球に送るなどの魔術儀式を執り行ってきた。今回の聖板戦争に参加する強力なマスター・サーヴァントを鏡像存在で撃破し、その魔力を反地球に捧げ吸収させる計画を立てている。またそれらと並行して、地球最高神霊とタイプ・アースであるガイアの怪物も鏡像で撃破、その魔力を奪取するつもりである。
…だが実の所、彼の真の主人は別に存在する。その主の為に、反地球を仮初の主人として利用しているに過ぎない。得た魔力や生命力は最終的に反地球ではなく、その主に捧げるつもりである。そもそも反地球の誕生にはカル・カ・シェオブの一族が関わっており、最初から地球と戦わせ、その力を弱らせる為の当て馬として作られた。
起源 : ?
属性 : 虚、地
魔術系統 : アルキンドゥス占星術
魔術特性 : 異元素変換、交霊術
魔術回路 : 質B/量A/編成・正常
効果は単純ながら、破壊力は一級である。
使用時は高濃度のブラックプラズマに満たされた異星の磁気海が出現し、ハチソン効果によって遊泳する異星怪霊の群れが出現。触手腕を伸ばして生物・非生物を問わず、エネルギー変換の後に吸収しようとする。ただしこの固有真界を発生させるには、現実に比肩し得る程の情報量を心象に持たせなければならないので、エグザFLOPS級以上の性能を持つスーパーコンピューター並みの情報処理力が術者に求められる。
…似たるは真なり。フレイザーが金枝篇で延べた類感呪術の、世界版ともいうべき奇跡。カル・カ・シェオブは宝石翁ゼルレッチとは別のアプローチで並行世界干渉に到達したと言える。
概念とは脳が捉えた事象を、抽象化・普遍化して思考の基礎となる基本的形態としたもの。TYPE MOON作品の魔術は、人の意思を世界に刻み付ける大魔術式を用いた魔術であるので、概念を無効化されると事実上魔術で影響を与える事は不可能となる。当然、概念武装や英雄という概念が生み出したサーヴァントの攻撃もほぼ無効化されてしまう。
カル・カ・シェオブと彼が所属する地球外知的生命体の統合無意識は、地球人類の統合無意識である『霊長の意思』の数百倍の規模を持つ大総体。また彼らは地球人類より遥かに高度な脳による情報処理力や知覚能力を持つ者も多く、その生み出す異星概念は『量』と『質』において地球人類のそれを遥かに凌駕する。彼らの概念に戦いを挑むという事は、例えるなら多くの信仰者を持ち、長年の神学論争に裏打ちされた膨大な情報量を持つ概念の集大成・キリスト教の聖書に、未開の少数部族の言い伝えレベルの神話で反駁しようというようなものである。
地球人の生み出した脆弱極まりない稚拙かつ未熟な概念ごときは、深遠広大なる宇宙の賢人達からすれば子供のホラ話以下。『あらゆる○○を無効化!』『絶対的な命令権を持つ!』『世界を改変! 運命を操作!』と幾ら息巻いても失笑を買うだけである。同じような内容でも、人の持つ概念と彼らの持つ概念ではその深みに差が現れるのは仕方の無い事なのだ。魔術の根本原理たる『世界に刻みつける力』の強さも範囲も、両者の間には歴然とした開きがあるのだから…。
…と、カル・カ・シェオブは説明し、地球人の意気を挫こうとする(説明の際には彼のバックに、演出で深淵なる宇宙の闇が浮かぶ)が、これはハッタリ。確かにその言の通り、地球人の持つ概念は、高度に進化した宇宙の知的生命達の持つ概念から比べれば脆弱ではある。しかし例え辺境の未開の少数部族の言い伝えだとしても、それに強いオリジナリティと魅力があればどうだろうか。聖書を凌駕する事もあるだろう。量だけが情報の優劣を決する訳ではない。現に極東にある日本のアニメ等のヲタク文化は、マイノリティであったが今や世界を席捲しつつある。
…彼ら宇宙勢力は自分たちにはない豊かな想像力と多様な文化・価値観を持ち、独自の概念を幾つも生み出している地球人類の可能性を怖れ脅威を感じている。彼らは高い知性を持つが故に、一つの真実に早々に辿り着いてしまうので多様性が芽生えず、誰も皆似たような考えになってしまっているのだ。想像力の翼は未知の世界の空にこそ羽ばたくもの、なんでも予測できては自由な想像の介在する余地がない。
ゆえに概念の完全無効などはまったくの虚偽。巨大なHPを持つだけの者が、自身を不死身であると詐称しているだけのこと。こちらからの概念干渉は100%無効化などされておらず、間違いなく影響を与えている。即効性や確実性が無くなっただけで、通じていないように見えても、諦めず更なる魔力を込めて幾度も干渉を行えば、やがてその効果を発生させられるのである。これに気づく事がカル・カ・シェオブを打ち破る鍵となる。
無論のこと、人類の概念が形をとった訳ではない銃火器、気功、超能力、真祖が使う空想具現化などによる攻撃は相変わらず素通しである。また人に近い思考形態を持つホムンクルスや人工知能が持つ概念も無効化できるが、あまりに人間とかけ離れた思考や脳構造を持つそれらの概念は無効にはできない。
今回はいにしえに地球の対抗馬としてぶつけるべく誕生させた『反地球』の配下として聖板戦争を利用し、人と地球とその鏡像、三方の共倒れを画策。更にその機に乗じて、地球勢力の中で最も警戒すべき脅威である最高神霊(一神教の父なる神)・ガイアの怪物・神造兵装エクスカリバーらを破壊、それらの持つ魔力を生贄として異星の王に捧げる計画を発動する。
前回の第四次聖板戦争で行ったマグヌム・オプス関係で進行中の別計画も含め、ここまでのところカル・カ・シェオブの作戦は順調。五次聖板では強大な力を持ち、世界を思うままにできる程のマスター・サーヴァントが多数出現しているが、それすらも彼にとっては十分予測の範囲内。
…のはずであったが、現実は中々思い通りにいかないものである。妖術師アルシャンク(島村鰐氏製作キャラ)が発生させたブラックホールの出現だけはまったく予想外であり、すべてを台無しにするこの状況に慌てている。ブラックホールは反地球の鏡像存在で再現できない上に、仮にもう一個コピーできても被害が二倍になるだけ。異星勢力は地球という星自体を手に入れたいようなので、破壊されては長年の準備が水泡に帰してしまう。また英霊の座を高次元に遠ざけ、聖板戦争を二度と起こさせないだけの力を持つあるキャラ『繋ぐ者』の存在も、とある理由により強く警戒している。彼女が出現するルートでは、相反する力を持つ『回帰者』をぶつけるように立ち回る事で、何とか相討ちに持ち込めないかと目論む。
※今回の投稿は大幅に〆切をオーバーしてしまいました。お許しいただいた運営のえぬえ氏には、深く深く感謝しております。氏や前回、前々回の運営者であるはどまん氏、ナハト氏、そして素晴らしいキャラ群を製作してくださった聖板投稿者の皆様には感謝してもしきれません。聖板のお陰でこの5年、生き延びて参りました。
能井氏、デリンジャー氏、のの氏、夜霧氏、イ○○○○○○○氏他の皆さん。良かったらまた次回、今回は見られなかった投稿作品を拝見できたら嬉しい限りです。