【迷える神の焔】火振望現

概要

炎の魔術を自在に操る魔術師。顔面に大きく刻まれた十字傷が特徴。元彷徨海所属。


ある理由から新興宗教を立ち上げ、その布教の為に世界を転々とする。
成果は捗々しくないが、特にそれを悩んだり焦ったりする様子はない。
国同士が争う事のない平和な世を願うが、その手段を武力・魔力に求めている。

性格
一人称:私 二人称:君、貴方

「――この眼前の炎をこそ崇め給え。
 固定された概念すべてを焼き払った先に、平らかな世界が見える」

常に薄い笑みを湛え、落ち着き払った紳士的な振る舞いをする。
見る人によっては感情が欠落しているかのように映る。
しかしその瞳には燃え滾る執念・憤怒・激情を宿し、我を通す為には悪行にも手を染める冷酷さを持つ。
過去のトラウマから『英雄』という存在を憎悪している。
方針(聖板戦争での立ち回り方)
自らの目指す思想には“英霊”という存在は邪魔なものだとして、聖板戦争の妨害を目論む。
同時に願望器としての聖板にも興味は持っていない。
街の隅々まで巡りながら目についた戦争参加者を闇討ちし、着実に始末するのが当面の行動方針。
また、この町には探し人の気配がするらしく、接触を図ろうとしているらしい。

なお彼も小聖板を受け取ったものの、早々に処分している。しかし破壊には至らなかった。
戦闘スタイル(強み・弱点含む)
火の魔術を巧みに使いこなす。火球・爆炎・熱線何でもござれ。
己の体の一部を炎に変化させる魔術により、肉体が無くなる事による物理防御力と再生力、
炎をブースターのように噴射しての機動力をも身に着け、攻守共に隙が無い。
本気を出せば全身を炎に変え、岩石も蒸発するほどの大火力を発揮出来るが、
殺人や大量破壊は本懐でないので自戒している。

しかしそれでも「魔術師」の域を出られていないのが彼の弱点、と言えるのだろうか。
性格的に相性の良い相手・悪い相手
相性の良さは考えない。が、人の話を碌に聞かない者などは苦手。
特に偶像を崇拝する狂信者に対しては嫌悪感を露わにし、皮肉めいた発言も多くなる。
台詞の例
「さぁ、屈服するがいい。
 灰すら残さず焼き尽くす……と言うのは流石に面倒なのでね」

「こんなモノがあるから、あんな茶番が起こるのだ……」





その他、単・火属性を除いた彼の扱う術の一部を記す。

「踊れ」熱砂
火・地・風の複合魔術。
足元の地面を爆破し、散弾と化した砂塵を放つ。
元々は地の魔力のみを用いた目くらまし程度の術だったが、
風の力による速度、更に火の力による貫通力を得た事で、充分な攻撃力を発揮する。

「奪え」氷雪
水の魔術。対象を凍結させる簡単な術。
そこに火の力を織り交ぜ、周囲の熱を集め吸収する事でその効率を上げている。

「纏え」極光
空の魔術。周囲に光のバリアを展開、敵の放った魔術を受け止めて自身の魔力に変換する。
彼の操る「物体からマナを吸収・集束する」術も元はこの魔術の簡易版である。
サーヴァント基準で対魔力:C~B相当の魔術防御力を発揮するが、
例えば魔力を籠めた銃弾など、魔力に依らない威力を持ったものまでは防ぐ事が出来ない。

肉体保存
魔術礼装であるコートに付加されている能力。
着ておく事で『「集え」炎神』発動時に炎へと置換された身体の修復をより迅速に行う事が可能。









 ……

二十年ほど前、彼は同じく魔術師である友人の紹介により地中海沖のとある島国へと渡った。
友人の故郷であるそこは大結界により隔絶され、大小の島々で構成された世界であり、
数多くの魔術師らが領地を形成、それぞれ暮らす中で、彼は魔道研究に明け暮れた。

フランスと故郷を行き来しているという友はよく語っていた。
数百年前に、この一帯を治めた魔術師の伝説――
その魔術師は神の力を身に纏う事で外敵を迎え撃ち、その進攻を阻んだという。
英雄として称えられたその魔術師に肖り、降霊術を追及する者がこの地には多いそうである。
当然ながら、彼にとっては名も知らぬ存在であった。


しかし移住から数年後、明らかに様子のおかしい友が彼の元に駆けつけた。

「――助けてくれ。“敵”が攻めてくる。君の力が必要なんだ」

完全に錯乱している友はそのまま彼を拘束、自身の工房に引き込む。
その手の洗脳魔術である事を察するも、彼の魔力では解除出来ないほど強烈な術であった。
話を聞く事も出来ぬまま、彼は顔面を裂かれ、友はその血を以って魔法陣を描き上げる。
そして友が唱え始めた術式を聞き、彼は悟る。
――奴は、神霊を私に降ろそうとしているのだ、と。

「――助けてくれ。この国には『英雄』が必要なんだ。助けてくれ……」

詠唱を終えてから、友は再び震える声で救いを求め続けた。彼の苦悶の声も聞かず。


――肩を揺すられ、目を覚ます。
いつの間にか気を失ったらしく、どれだけの時間が経っていたかは分からない。
苦痛は引いたがまだ重く感じる身体を支えられ、友の操る風の術により共に高空へと飛び上がる。
そこで見たのは異形の軍勢が結界を突き破って海を渡り、他の島々を侵略していく様だった。

「“奴”が来たんだ……戦ってくれ、ボウゲン。その為に、オレは君を――」

言い終わらない内に友は急降下し、混乱の只中へと下り立つ。
そして彼は已む無く戦闘態勢を取った。

目の前に迫る軍勢を、小手調べに軽くあしらうつもりだった。
しかし、普段のものとは比べ物にならない力の奔流が、容易く彼の制御を振り切る。
暴走するまま解き放たれた魔力は巨大な火柱となって、天を貫き――


……再び気絶から起き上がった彼が目にしたのは、
廃墟と形容する事も不可能な、一面更地となった島々であった。
彼のすぐ傍に居た友――ピエリック・ウラガンもまた、跡形も無く焼かれてしまったのだろう。
これは自分の所為なのか?
憎しみ、悲しみ、自責、そして数多の疑問……突然の出来事に様々な感情が入り乱れ、
彼の心もまた、呆気なく壊されていった。


眼前の荒涼とした大地を眺め、彼は一つの思想を得る。
――何も無い事こそが良い。
争いや諍いの種になるモノ、そうしたものは根こそぎ消し去るに限る。
そうすれば、戦いは起こらない。悲劇も起こさない……と。

歪な妄想だと自覚はあるものの、そう思わずにはいられなかったのである。


その一方で、後に彼は己の力を制御すべく修行と研究に打ち込んだ結果、一つの結論に至る。
神霊降ろしの儀の際、彼の身に刻まれた「ignis」の文字
――これは即ち、火神「アグニ」の力、その一部を彼は得てしまっているという事である。
それは「アベレージ・ワン」として五大元素の魔術を扱える彼の在り方をも歪めていたのだった。