扱う技は香取神道流の元ともなった香取の太刀、別名を 『 経津(ふつ)の太刀 』 。その名の如く日本神話の剣の神・経津主神が伝えたとされる剣法で、天真正本人が言うには経津主自身に夢の中で教えを受けたとの事。
その神域に達した剣の腕は尋常ではなく、東西河童戦争ではあわや東の大将ねねこ河童を討ち取る寸前までに及び、海河戦争では並み居る海の猛者を退け竜宮城を半壊させ、腕試しと称して日本各地に住む四十八天狗の殆どを撃破、その上に最強の鞍馬山僧正坊と伝説に残る死闘を演じ引き分けた…などという逸話の数々が妖怪達の間で語られている。
実は人間である陰流剣術の祖・愛洲移香斎久忠とも彼が若き頃と晩年の二度立ち会った事があり、一度目は圧勝したが二度目は惜敗した。後世の記録にこそ残っていないが、他にも無数の名勝負を繰り広げている。
《握ノ法、技一覧》
○不動搾…刀身を決して離さず、揺るがさない不動の握り。空間に固定されたような固さを持つ。
○御膳取…脱力し、指二本でつまむような軽い握り。刀に変幻自在の軌道を与える。
○木間槌…握った刀身を掌中で前後させ、柄の分だけ間合いを伸縮させる握り。
○刎釣瓶…柄の端を握り、掌で弾いて剣を飛ばす奇襲技。
○龍雲飄…握った柄を掌中で転がし、高速の捻りを加えて合わせた相手の太刀を弾く。
○猿子絞…柄ではなく鞘を強く握り、抜刀と同時に放す事で鞘走りの速度を高める技。
○行逢鴎…片手で握った刀を、いつの間にかもう片方の手に移し替える瞬間移動技。
○閻魔返…片手で握った刀を、一瞬で逆手に持ち替える技。繰り返せばくるくる回すようである。
○牙門揃…指の間に挟むようにして剣を片手に複数握り、四刀流を実現させる驚異の技。…黒鍵?いや六爪か。
○影裡添…斬りつける際に太刀の峰の部分を握り、己の剣の軌道を変化させる技。
○夜伏霞…剣気により、何も握らない手に剣影を生じさせる幻覚技。相手はつい反応してしまう。
○八柏折…相手の太刀の刃の部分を握って剣を封じる技法。
○鬼鷲抓…鍔迫り合いの際、相手の刀を持つ指や手首を握り潰す変則技。
この他まだ多数、握り技がある。
天真正はこの技を、真の強敵と認めた相手にしか使用しない。
…相撲だけはやっぱり下手。
数百年の研鑽の結果、自身の身体から発生した力だけではなく風鳴り(大気微震動)地鳴り(大地微震動)などの自然エネルギーをも収束し、剣先に宿らせる事が可能となった。結果として木の棒や爪楊枝、あるいは素手の指にさえ鉄を穿つ貫通力を持たせる事が可能となる。この力の収束を天真正は神集(かすみ)と名づけている。
生物を対象とした殺気や闘気をもって戦う者ほど、この攻撃には反応できない。目の前にあるならば天地日月すら斬れる…と思える斬気を持つ者のみがこの攻撃に応じる事ができる。その斬気を得るには、無念無想にてひたすら剣を降り続けるしかない。
一見無敵にも思える能力だが、瞬息の間は不規則にやってくる上ごくごく刹那の一瞬である為に、高速の太刀を振い機を読むに長けた超達人・天真正ですらそのタイミングを掴んで攻撃する事は難しい。おまけにこの時間流の知覚には大きく精神と肉体を磨耗させるので、長時間の行使は無理である。
天真正とは 『 関八州古戦録 』 の記述に登場する海に住む河童。彼に剣法を教わった弟子・鹿伏兎刑部少輔は、日本剣術三大源流 『 天真正伝香取神道流 』 の開祖である飯篠家直の師。同じく日本剣術の源流の一つとされる京八流の開祖、鬼一法眼は鞍馬山僧正坊と同一とも言われるので、東西日本剣術の発祥には天狗と河童という妖怪が関わっている事になる。(注・天真正伝香取神道流の由来説明では、天真正が河童であるなどとは一言もない)。
何の因果か、今回彼のかつてのライバル・鞍馬の大天狗こと鬼一法眼がAMZAK氏の手によってキャラクターとして投稿されている。
二重人格剣士、という事で元ネタは某海賊漫画のあの人。
【セリフ】
 『 心は万境に従いて転ず。我が技前も至極の境地に至りしか。 』 
 『 この一刀は春の宵、孤り田面に降り立つはぐれ鷺の如し。 』 
 『 これは鞍馬の御坊ではござらぬか。かくなる上は久方振りに技比べせん。 』 
 『 士(もののふ)の心の内に死のひとつ、忘れざりせば不覚あらじな。  』  
 『 じんじろげ~のつんつるげ~は地蔵さんの毛~  』