18世紀末から19世紀前半に西欧で起こった精神運動の一つ。影響は様々な芸術や文化活動に及び、恋愛賛美・民族意識の高揚・中世への憧憬・エキゾチズム・神秘主義といった要素がその主なテーマである。それまでの理性偏重や合理主義に対し、感受性や主観に重きを置く事に特徴を持つ。あの穿いてないルソーさんも、初期ロマン主義の先駆者と言えるだろう。
社会的に抑圧されてきた自我の解放、それによる実存的不安…特にバイロンはそれらを体現した人生を送った、ロマン主義の代表であった。現にバイロンの死後急速に大衆の熱は冷め、産業革命がもたらす功利主義的思想や現実を見る写実主義に取って代わられる事になる(←賢者タイム)。
 『 君よ青春を悔いるなら、何故に命を永らえん。栄光なる死を遂げるべき地は此処にあり。立ち上がり戦場へと馳せ参じよ。己が命を捧げよ。戦士の墓こそ君に相応しき。大いなる安らぎが待つ、友よいざ共に。 』  
長編物語詩チャイルド・ハロルドの遍歴が爆発的大ヒットした結果、バイロンは超売れっ子作家詩人になる。その美貌も相まって世間のご婦人方が彼を放って置く訳もなく、リア充な日々を謳歌しストーカー女に付きまとわれる事もあった。
 『 この胸の遣る瀬無き恋の誓いを、麗しき貴女よ胸に秘めていておくれ。それはエロースの美しき夢の歌。
おお私に与え給え、貴女の魂より出ずる優しき瞳(め)の光を。初めてのキスに宿る喜びを。
ああ、人はアダムの昔から不幸と言うはもう止そう。目を閉じその唇を貪れば、今もエデンは甦る。 』  
理性を持つ人間は従来の権威から自由であり、自己決定権を持つとする啓蒙思想から生まれた近代思想の一つ。民主主義・個人主義・自由資本主義の基礎となった。あらゆる束縛を越えた自由な精神を持つバイロンもまたリベラリストであり、偽善に満ちた社会への痛烈な反抗心を常に持ち続けた。詩人ハイネをして、彼をリベラリズムの比類なき布教者と呼ばせたのである。
…ただ彼の場合放蕩放埓、やりたい放題とも言う(笑)
 『 汝の国に今一度自由が甦れば、その時は私を想い起こせ。菫の花は今なお深き谷間に萌え出で、例え萎れるとも涙を吸いてまた花開く。そして私は再び戦うのだ。汝の心も我が声に目を醒まし起てよ。我らを縛る鎖の環の、その戒めを破らねばならぬ。 』  
 『  乙女の数は多けれど、汝がごと奇しき力のあるは無し。妙なるなれが声聴けば、大海原も魅惑(まど)いして、しばし息を止めぬれば、さざなみ静かに輝きて、眠れる嬰児(みどりご)そのままに、優しく胸をそよがせり。 』  
ギリシア解放戦線に参戦し、トルコ軍と戦った軍人である。それなりの軍略とサーベルや銃での戦闘技術を持つが、戦闘系サーヴァントとしては並みよりやや下回る程度。本業は詩人だから仕方ない。
 『 打ち弾く手琴をいざ奏で、世に名も高きその勲(いさお)しを、燃える炎のその調べ、湧き上がる声も高らかに。アトリュースの子らの戦いを、ティレのカドモスの戦いを、英雄鎬を削り合い、滅びし様をば歌いたし。されど戦歌(いくさうた)我知らず、手琴は恋のみ奏でいる。今日も明日も次の日も、手琴は恋のみ奏でいる。 』  
 『 罪の悦び過ぎたる所を、名残も惜しく二人は去ぬ。また逢う夜の望みを抱き、誓いの言葉交わしたけれど、嘆くは今生の別れの如く。罪を許さぬ恐ろしき天の光は輝き、心ありげな星は遠き空より、その弱き心を見たかの様に静かに燦めいた。 』  
主人公のマンフレッド伯爵は亜神めいた万能の超人。作者同様に実姉と許されざる恋に落ち、世間の非難に耐えかねた姉は自殺。彼女を忘れようと魔術に打ち込み、やがては神や精霊を呼び出せる大魔術師となる。しかし亡き想い人への念断ち難く、無数の精霊や妖精を召喚しこの想いを消してくれ、忘却させてくれと願ったが叶わない。遂には冥界の邪神アリマニーズの元へ赴き、姉の死霊に会う。しかし死霊はマンフレッドの死だけを告げると消えた。人の身で妖魔精霊を思うままに呼び出し、王のように手足と使った報いが来たのだ。黒雲となった地獄の軍団が殺到し、マンフレッドに襲い掛かる。彼を助けようとした聖僧が、悔い改め神の慈悲を請えば助かる…と呼びかけたがマンフレッドは嘲笑してこれを拒み、魔術で地獄の軍勢を撃滅した後に力尽きて死ぬ。彼の魂は地獄にも天国にもゆかず、その行き先は誰にもわからないのだった。
マンフレッドは神に頼らず己を捧げず、自己意識による破滅を選んだロマン派人間像の究極である。その最期は自我の自由ゆえに背負わねばならぬ、寄る辺無き孤独の苦悩を現している。後にニーチェの超人思想にも影響を与えた。
 『 おお、我が愛しの姉アスターテ。宿命の日は閉じ運命の星が落ちようとも、君の優しき心のみは、誰もが咎める我が過ちを見まいとする。我が哀しみをよく知る君の心は、たじろぐ事無くそれを分かち合ってくれた。私の心が描いた愛は、君以外には見出せなかった。そして虚しさだけを残し、君は逝ったのだ…。 』  
この宝具の存在が、後々古読市に大きなパニックを引き起こす事に…。
イギリスのロマン派を代表する英雄詩人で爵位は男爵。名門ケンブリッジ大学卒。奔放な女性遍歴を送り、ギリシア独立運動に参戦するなど三十六年の波乱の生涯を送る。恋と詩と自由に生きた男。熱狂と倦怠、恍惚と憂鬱、高貴と卑俗の狭間で揺れ動く矛盾した気質を持ち、腹違いの姉との禁断の恋や同性愛のスキャンダルで世間を騒がせた。イギリスではシェイクスピア以来と騒がれ、詩人ゲーテからすら今世紀最大の天才と呼ばれる。19世紀のヨーロッパ文学に深く広範な影響を与えた。
サーヴァントとして召喚されても生前のスタイルを崩さず、ひたすら歯の浮くセリフを繰り返しナンパに明け暮れる。マスターのフィンヌーラばかりか、たまたま召喚された実の娘までターゲットに…。バイロンだけにバイなので男子も危ないぞ!
《セリフなど》
「 参…サン…ロク? 呼びにくいから君の事はシャムロックと呼ぼう。…強欲なユダヤ人みたいな名前だがまあいい。 」
「 クニス君はいちいち細かいなぁ。なんだか知り合いの神経質な医者を思い出すよ。シャムロック君を見習いたまえ、ハハハ。 」
「 古今の英雄が集う戦場…なんと創作意欲が湧く場なのだろう! 我が友メアリ・シェリーなどにもひょっとしたら会えるかな? 」
「 いやしかし娘と一緒に呼ばれるとは奇遇だね。どうだいお二方、どちらか娘の婿に…冗談だよ。 」
※ドット絵では裾の開いたズボンを穿いてますが、彼の時代ではまだありません。彼の死後まもなくヴィクトリア朝からです。イメージ優先にしました。
 『 星よ、天空の詩なる星よ。お前の輝く姿に、人と国の行く末を読み取ろうとする我らを許し給え。
偉大であらんと欲する憧れのままに、我らのさだめは自らの儚さも省みず、星と共にあろうとする。
星よ、お前は神秘と美の結晶。我らの胸に遥かな愛と敬虔を呼び覚ますがゆえ、
栄光、権力、命そして運命…それらすべてを星と呼ぼう。 』