人物設定書くの面倒だったからヘッタクソなSS書いて誤魔化す事にした  目を覚ました視界には、広がる一面の曇天。  背から受ける風と、耳朶を打つ風音が、自分が落下しているという事をこれ以上なく実感させてくる。  目を凝らすと、遥か天上に一点、黒い靄が小さく、風に尾を引いている。  自分の直上にあるその靄の場所が、自分が討たれた所だと思い出した。  そうだ、俺は今しがた討たれたのだ。    何故討たれたのか… 理由は見当も付かない。  現時点で恨まれるような相手とは、一通りケリを付けたと思っていたのだが。   「そういえば…」  此処まで一緒に昇って来た相棒の事を思い出した。  先程の攻撃に驚いて自分を振り落としたそいつは、既に視界の中にはいない。  さっきの敵の一撃で蒸発したか、或いは既にどこへなり去ってしまったようだ。 「薄情だな…」  タメ息すら出なかった。  相棒の側からしてみれば、やりたくもない戦と、自分のワガママに付き合わされたのだ。  今頃、冥府なりそこらの空域なりで「ざまぁみろ」と笑っていることだろう。  出会った時だって、特別心が通っている訳でもない。  怪物を倒すのに必要だと思って捕まえて、その後も荒事が続く度に、なし崩し的に使い続けたというだけの仲なんだ。  それを今まで相棒だなどとほざいていたのだから、どっちが薄情で冷血なのやら…  ふと、自分が過去を振り返っていることに気が付いて、これが走馬灯ってヤツか… などと悠長に感想を呟いた。  招待… 天啓… 王妃の死… 兵士の骸の山… 蛮族の屍の川… 毒に悶え死ぬ化け物…  断片的に思い出しながら、意識は過去に向かっていく。 『あなたには、■■■■の討伐に赴いてもらいます』  つとめて優しい声で、記憶の中の王が言った。  この王の出してくる命令はいつも命がけの無理難題だった。  それも、国の兵は一人も使わずに、俺一人だけ。 『負けるとしても戦士としての生を遂げなさい』 「要するに、死ねって事だろ…」  化物退治に一人で行かせるという時点で、その事には薄々気付いていた。  或いは直接死ねと言えば、その手で剣を振り介錯でもしてくれれば、若しくは俺も大人しく死んでいたかもしれない。  ただその、自分の手を汚さずに遠回しに済まそうとする小奇麗な姿勢が、俺は気に食わなかった。  意識は更に過去へ向かう。謁見・・・手紙・・・閨・・・ 『私が忘れさせてあげる・・・』 「止めろ…」  在りし日の王妃の言葉が脳を焼く。  罪を清めるなどと出任せで男を漁っていたペテンだった。  だがまぁ、そんな事は些細な事だ。  その女の、禁句に対する意識の低さに比べれば。  寝床の上でのただ一言、たったの一言に、俺は耐え切れなかった。 『死んだ■の事なんて・・・』 「止めろ辞めろやめろッ!」  気付けば天空に向かって無様に吠えていた。  チクショウめ、思い出すんじゃなかった… そう後悔しても最早止まらなかった。  意識は過去へ・・・ 最も暗く深い所まで転がり落ちていく。 「                      」  その記憶の中の彼女には、もう言葉も覚えていない。多分聞こえてもいなかった。  ただ、表情を覚えている。  相手の姿に対して、信じられなくて、困惑や緊張に歪み固まった顔…  多分、その時の自分も同じような顔をしていたと思う。  違うんだ、こんな結果を招くつもりは無かった…  こんな筈じゃないんだ…  悔いても吠えても、もはや彼女にその言葉は届かない。   「俺自身の栄華や幸福など、ただ空しいばかり…」  天上にあった黒煙は、もう散り散りになって輪郭を失っていた。 「だから“この空”にも、神様を信じて行ったんだ…」  足元には、先程まで小さく淡く遠かった地面が、既に実体を持って迫ってくる。 「俺はただ■■■■に… 天国に逝った妹に…」 ―――― その言葉を終える前に、  自分のヘシ折れる音が、耳奥に響いた。