『いーじゃねえか、ちっとぐらい触らせろよ減るもんじゃ無し。
 いらのもんになるだけでさぁ』

アウトリュコス/Autolycus

-憎まれ仔オデュッサメノス-

 ギリシャ神話に登場する、盗みの名手。様々な伝承や英雄叙事詩にちょいちょい現れる“名脇役”。
 伝令神ヘルメスと、半神戦士ダイダリオンの娘キオネーの間に生まれた息子。この出生にあたっては、この美しき娘キオネーをヘルメスとアポロンという二神が奪い合った末に、それぞれの神との間に1人ずつ子が設けられたという、何とも殺伐としたエピソードがある。

 父神ヘルメスの“薫陶”を受け、アウトリュコスは窃盗と偽誓の極意を極めたという。その業たるや、自身の姿形を変える、触れた物を目に見えなくする、獣の毛色の黒白をあべこべに入れ替える、有角獣から無角獣に角を挿げ替える、等およそヒトの盗みや騙しの常識を大いに逸脱した代物であった。一体何を教えたらこうなるのだ。
 なお伝令神ヘルメスは盗人や詐欺の神としても知られるが、それ以外にも商売、交易、競技、雄弁、音楽、発明と、ありとあらゆる文明の叡智を司る神でもある。
 …何というか、悪いところばかりが親に似たものだ。

 さて、数々の盗賊稼業でギリシャ中に悪名を轟かせた彼には、意外な人物との繋がりがある。
 十二の試練の勇者ヘラクレス。
 トロイア戦争の智将オデュッセウス。
 英雄船団アルゴナウタイの筆頭イアソン。
 ギリシャ神話サイクルにおけるベストセレクションとも思えるこの英雄の面々に対し、オデュッセウスとイアソンには祖父として、ヘラクレスにはレスリングの師として、アウトリュコスは“薫陶”を授けた。
 (前者2人などは特にその狡猾さが如実に受け継がれている。誰かこの負の連鎖を止めてください。)
 叙事詩「オデュッセイア」には、オデュッセウスの名がアウトリュコスの異名「憎まれ仔(オデュッサメノス)」にちなんで名付けられた、との記述があったりする。

性格
一人称:いら
二人称:テメー

 その場その時を思いのままに振る舞う自由人。
 いい年こいてもう兎に角目に付いたモノに触らずには居られない好奇心の塊。
 そのくせいざ手に取ったら次の瞬間にはもう興味を失っている。無責任が服を着たような男(着てない)。
  …当然である。彼は少し手を伸ばすだけで、簡単に欲しい物を手に入れることができたからだ。
 刹那的な甘露辛酸の連続に生きた彼は、人の世の凡てに飽いているようで渇いている。
 「まだ何かある」、「もう何もない」、そんな切望と失望の瞬きこそが、彼の原動力である。

 倫理観クッチャクチャ。
 口から出る言葉の端々からの餓狼の如き貪欲さ、残忍さが滲み出ている。
  モノに対する価値観念が極めて希薄な彼にとって、モノは得易くも失われ易い儚きものだが、
  本当はそれほど容易に得られる訳でも失われる訳でもないという事を本質的に理解できない。

 尤も彼としてはそれを良しとしている模様。自身がクソ悪党であることを矜持としている節さえある。
 曰く、“嫌われ、憎まれることを代償に自分は甘い汁を吸っているのだ”。
  何の対価も無くあらゆるモノを手にすることが可能な彼の、唯一の分別であり、誇りである。
 それ故に“自分を悪人だと思っていない、口実つけて開き直るエセ悪党”を蔑視している。

 利己的な男のようで(実際その色が濃いのは間違いない)、存外身内に対して面倒見が良い。
 彼にとって珍しく興味が長続きするらしい。
 ただし、加減を知らないこの男は割とお節介な、というかありがた迷惑なレベルで世話を焼くため、世話を焼かれた側は却ってそれが齎すトラブルを背負い込んでややこしい事になりがち。

方針(聖板戦争での立ち回り方)
 マスターの指示で警察関連の、マスターの手元まで回ってこない情報の収集を主に行っている。
 “特に古読刑務所は重点的に”とはマスターの言。
 そのため積極的に戦闘に関わっていったりするわけではない。
 …もっともこれはマスターの意向に沿った行動方針であり、それは最低限尊重してはやるけども“それはそれとして”、彼自身は独断で目に付いた他のマスターやサーヴァントの動向に逐一目を光らせている――獲物を見る目で。
  彼にとっての獲物とは、聖板であると同時に彼が蛇蝎の如く嫌う“名分ありし悪人”であり、
  どうせならそういった手合いが見事聖板を完成させ願いを成就せんとするその瞬間に、
  そいつを掠め取ってやろうと目論んでいる。
戦闘スタイル(強み・弱点含む)
  前段階として、彼は「格闘家としての顔」と「泥棒としての顔」を接する相手の性質に合わせて
  意図的に使い分けている。秘匿した側の「顔」を切り札として運用するためである。


 そもそもよっぽどの理由がない限り自分から戦闘を仕掛けたりはしない。
 やむを得ず戦わなければならなくなった場合は戦う――かと思いきや逃げる。気配遮断と隠れ布を駆使しての戦線離脱を図る。それも適わないとなった場合にようやく彼の戦闘行為は始まる。

 基本的には敏捷性と隠れ布の迷彩効果を利用しての接近戦に持ち込む。
 レスリングによる組み合い、何より手数のアドバンテージによって白兵戦は期待できるがそれ以外はからっきし。とにかく近づけるかが鍵。
  ただし、これはあくまで“交換”の宝具を秘匿した状態での戦法に過ぎない。
  どこぞの陣営から“交換”してきた遠距離用の礼装なり宝具なりを用いれば、この状況はあっさり
  覆る可能性がある。ただしそれには隠れ布を“交換”用の担保として犠牲にする必要があるが。
  またそうでなくとも、自身の急所と非急所の位置を交換して致命傷を避けたり、
  相手の攻撃力と自身の攻撃力を、攻撃を受けた瞬間に交換しての合気道もどきとして運用したりと、
  単純な戦術の拡大も望める。


 …なお、目をつけた相手にはその限りではない。一転して執拗に付きまとう。どういう魂胆なのだ。
  そう問われれば彼はこう答えるだろう。
  「一石二鳥の二羽目背負った一羽目追い回してんだよ」、と。
性格的に相性の良い相手・悪い相手
 いい加減でチャランポランな男ゆえ、同類とつるむ…かというとどうもそんな感じでもないらしい。
 「同じステージに立つヤツは敵」のスタンスの模様。加えて所謂理屈こねる悪党だいっ嫌い。

 案外どちらかというときっちりした善人の肩を持ちたがる(相手がどう思うかは別だが)。
 自分色に染めたくもあり、自分みてーにならないように強く背中を後押ししたくもあり、らしい。  
パートナーについてどう思っているか
 堅てー女だな、面倒くせー女だな、ぐらいに思ってる。
 …生前彼が世話を焼いてきた連中は得てしてそんな奴ばかりだったが。

 どうにも邪険に扱われている節はあるが大して気にしていない。
 お構い無しに世話焼いたりちょっかい掛けたりしている。
台詞の例
『金も命も価値基準も、ぜーんぶ天下の廻りもんってな?
 ―――だからテメーの要らねえソレ早く廻せや』

『…んだよ、結局テメー“自分のがよっぽど正しい”って言いてーだけじゃねーか…
 興醒めだわ、がっかりだわ、悪党のふりして甘い汁だけ吸いやがって…虫ケラの風下にも置けねーわ』

『掛け替えの無いもんなんざこの世にゃねえよ。
 自分(テメ)ん中にだけあるもんさ』