元から男尊女卑の性格という訳でもなく、子供の頃からムサ苦しい男集団で育ってきた事もあって、女はよく解らないというのが本音だった。愛妾などもいたが単に欲望を晴らし、王の子を成す対象としてしか認識してはいなかったのである。しかしある時、彼が倒した敵の王の娘に自分でもよくわからない感情を抱き…つまり恋をしてしまうのだが、その気持ちをどうしてよいか解らず、取りあえずその娘を強引に妻にした。不器用ながらも、必死に妻の歓心を買おうとあれこれやってみるが巧くはゆかず、それでも少しは心を開きかけてくれたか…と思っていたところで妻によって彼は暗殺されてしまった。しょせん、彼女にとってアルボインは憎き父の仇でしかなかった。
この最期のショックが尾を引いており、サーヴァントとして召喚された後も女性不信に陥っている。蛮勇を振るって戦場を生き抜いた豪傑を惑わせ、狂わせ、惨めな死を与えた女という生き物を、彼は心の底で怖れているのである。
髑髏杯は歴史上、戦で勝利した敵の王の頭蓋骨などが使われる事が多く、相手の命を飲んで自らに取り込むという呪術的意味合いを持つ。日本では織田信長が浅井長政の頭蓋骨で作成したものが知られており、今昔物語では天魔の王の娘が髑髏の杯を持っていたという記述がある。アルボインはこの敵王の骨で作った杯を、あろうことかその王の娘に与えている。殺されたのもむべなるかな。
ランゴバルド族が北欧でウィンニリ族と呼ばれていた頃、両ヴァンダル族との間で戦いが起こった。部族は互いにその勝利を神に祈願し、戦神オーディンは朝起きて最初に見た部族に勝利を与えると約束。翌朝目覚めたオーディンはウィンニリ族を見て 『 あの長い髭(ランゴバルド)の者達は誰だ 』 と発し、ウィンニリ族が勝利した。この時のオーディンの言葉から以後、部族はランゴバルドを名乗るようになる。
如何なる仔細があってか不明だがランゴバルド王家に代々伝えられ、国が滅んで後はカール大帝を始めとする歴代のイタリア王が戴冠式で被る聖宝となる。かのナポレオンが被った事でも有名。現在ではモンツァ大聖堂に保管されている。
ローマを滅ぼしたる者は誰か? …と尋ねられた場合、西ローマを簒奪した傭兵隊長オドアケル、東ローマを打ち破ったメフメト2世などの名が挙げられるだろう。しかし古代から連綿と受け継がれていたローマ的文化を破壊した者こそ、この男とその部族・ランゴバルドと言っても過言ではない。彼以前にイタリア半島を支配した東ゴート族はローマの習俗や政治システムを真似、あたかもローマ人であるかのような生活をしていた。しかしその後に現れたランゴバルド族は、粗野なサクソン人気質丸出しでローマの伝統の多くを踏みにじり、断絶させてしまったのである。ランゴバルド王国の成立をもって、イタリアの古代史は終わりを告げたのだ。
彼の興した王国はやがて戦いに敗れ滅亡するが、それを成し遂げた者こそ中世を代表する英雄、シャルルマーニュことカール大帝である。…ローランと因縁あるやん。