①一般に知られる創作上の吸血鬼が持つ数々の性質。
②彼女の親吸血鬼である、ルスヴン卿から受け継いだ性質。
③タイプムーン作品に登場する、死徒としての性質。
④吸血鬼化したサーヴァントという、特異な存在ならではの性質。
…と、複雑ではあるがこのようにまとめる事ができる。
①はタイプムーンの死徒とは異なり、対象を吸血後に短時間で吸血鬼化するなどが重要な部分。
②は後述の日光耐性、流水耐性、誓約の力。
③は死徒としての『 人類史の否定 』 の力。宝具の加護を無効化する能力を備えている。
④はマスターからの魔力供給が必要なくとも、吸血行為で現界を維持できるなど。
…問題は③。生前に死徒だった(という設定の)バイロンから受け継いだ特性であるが、人類史を肯定する存在・英霊の写し身であるサーヴァントとは相反する力。故にそれは毒となってエイダを内から蝕み、程無くして彼女は消滅する運命にある。また、症状の進行に伴って宝具の力も弱まってゆく。
現代におけるあらゆるコンピューターの操作法を直感的にマスターしており、電子精霊・付喪神の魂魄レベルの高度なAIやサイバーウィルスすら容易く作成可能。その能力を十全に振るえば第三次世界大戦までも引き起こせるが、呪いとも言うべきギャンブル・ゲーム狂いのせいでまったく宝の持ち腐れ。せいぜいハマっているMMORPG内で、チート改造したキャラで暴れ回るくらいにしか使用されない。
A++ランクの計算能力スキルとして扱い、周囲の事象を瞬時に計算して限定的な未来予測を行う。物理的なすべての行動判定にプラス修正がつく。
史実上の彼女はそこまで途轍もない力は持っていないが、後世の人間のイメージによる英雄化により得た能力である。
しかしその未来予測にも限界があるようで、後々聖板戦争で彼女に降りかかる数々のアクシデントを知る事はできなかったようだ。
ルスヴンに吸血鬼化された子の吸血鬼たちは皆、太陽光や流水への耐性を受け継ぐが、その吸血鬼たちが吸血を繰り返し眷属を増やすと特性は薄れてゆき、ひ孫吸血鬼あたりではもう耐性は無くなってしまう。
しかし実際に目の前に現れた父は、母の言う通りの(いやそれ以上の)放蕩者。家庭など束縛以外の何物でもないと忌避し、挙句は実の娘を女としてガチ口説く体たらく。母は正しく、バイロンはとても父親になれるような男ではなかった。美化していた偉大な詩人・父への幻滅と生前嫌っていた母への悔悟、エイダは聖板戦争を天の与えた機会と捉え、父への復讐を目論む。
が、復讐半ばにして彼女はあえなく消滅する事に。―――嫌だ嫌だ、せっかく父に会えたのに。復讐したいのに。私の強き想いを知らしめるまで、消えてたまるものか!
バベッジの解析機関は現代のコンピューターの祖先であり、資金が足りて完成していればコンピューターの歴史は百年早まったと言われる。実際は四則演算や平方根の演算ができた程度だが、当時としては非常に先進的な技術の産物であった。エイダは著書にてこの機関用のプログラムコードを記しており、これが世界初のコンピュータープログラムと呼ばれている。
エイダの内部に混入した死徒の力によって、宝具としての機能が徐々に低下し始める。
術者の心象風景を形にし、現実を侵食して形成する異界創造法ともいうべき固有結界。もしもこの力の使い手が、
エイダのように規格外の情報処理能力と超計算能力の持ち主であったら…?
その胸中に描く心象は限りなく現実に迫る重みを持ち、世界の修正力をも欺いて、
通常ならば直ぐ消失してしまう固有結界を長時間維持できるのではないか―――。
ある時に固有結界を使用した際、結界内の一部の創造物が消えずに存在し続けたのを目の当たりにしたエイダは、
驚きつつもこのように推測した。
ならば宝具・バベッジ解析機関による超演算と固有結界を同時に使用すれば、
より現実に近い固有結界を作り上げ、或いは永久に結界を展開できるかもしれない。
早速試みた所、いつもの如く 『 蒸気大革命 』 のスチームパンクワールドが出現した。
ところがエイダの予想に反し、これまたいつものように固有結界は僅かの時間で消失。
そして以前と同様に、固有結界が生み出した架空蒸気機械の数々が、結界消失後も場に残り続けた。
彼女は結界の長期展開にはまだ機関の性能が足りないと判断し、
より優れたコンピューターを生み出すべくアップデート作業に没頭する。
…エイダは知る由も無かったが、真実は彼女の想像を遥かに超えたところにあった。
残された架空機械達は限りなく現実に近い創造物どころか、現実そのもの。
既に彼女の固有結界は固有結界ですらない、パラレルワールドへの扉と化していたのだ。
固有結界・蒸気大革命は単なるエイダ個人の心象風景ではない。
蒸気機関の発展に希望を見た人々の夢であり、有り得たかもしれないIFの歴史である。
それを作り出すエイダがバベッジ解析機関のバックアップを受ける事で、
夢であるはずのこの世界は、現実と見紛うばかりの精度を持つに至った。しかし現実に近づきはしつつも、
それはやはりどこまでいっても心象の投影に過ぎぬもの。決して現実そのものにはなり得ぬはず。しかし…。
バベッジ機関が精緻にシミュレートした仮想の人類史は、あまりにも真に迫っていた。
その結果、無数のパラレルワールド…並行宇宙の一つであるスチームパンクの世界を 『 相似性 』 によって引き寄せ、
虚構世界と現実世界が重なり、固有結界は 『 固有真界 』 となって別の世界の扉を開いてしまったのである。
似たるは真なり。並列した世界から同一存在ならぬ相似存在を呼び込んでしまう 『 擬似多重次元屈折現象 』 とでも称すべき、
フレイザーが金枝篇で延べた類感呪術の世界版ともいうべき、奇跡は成されたのだった。
この時入手した並行世界の超テクノロジーの産物・架空蒸気機械が、後に怪物を生み出す事になる。
本名をオーガスタ・エイダ・キング。人類史上で最初のコンピュータープログラマーとして名を残す、19世紀イギリス貴族の女性。
詩人バイロンの娘としても知られている。
…その父親であるバイロンと数奇な縁によって再会できたはいいが、彼のもう一つの姿である吸血鬼ルスヴンによって血を吸われ、吸血鬼化してしまう。結果、シオンのような理系ヴァンパイアに変貌。その頭脳に比して脆弱だった肉体が強化され、人類にとっては厄介な存在に。マスターも吸血鬼化した後は取り合えず父に従い、作戦参謀として古読市に吸血鬼の国を築くのに協力する。その一方で、相も変わらず自分の人生を翻弄し続ける父への復讐を企んでいた。
だが、ここで思わぬ事態が発生。吸血鬼化の際にルスヴン=父から受け継いだ死徒としての力が、サーヴァントである彼女の身を内側から蝕み、崩れさせてゆく。余命幾ばくもない事を知った彼女は、自らの存続と父への復讐を願い…とある行動を起こす。
当初は性格の違いから対立していた、同じ参麓救援チームのフィンヌーラとは、双方が吸血鬼化後すっかり仲良くなる。マヌケなマスターの国巣や参麓を、どっちが先に吸血鬼化するか競争して遊んでいた。美女二人にチューチュー血を吸われた国巣さんは、アヘ顔Wピースで人としての生を終えたという…。