-Ending-




後世の人間は2021年のことをどう評しただろうか。

そんな疑問が浮かぶほどに、北杜地方は不可思議な事件や事故、噂話で溢れていた。



テレビや新聞は淡々と報じる。




―近年稀に見る森林大火災

『おらぁ、生きてるうちにあんな大火災は初めて見たよ。一瞬雷様が見えたが、あれだけの規模だ。町内会の連中大変なんじゃあないかなぁ』
~遠哭町住民A


―治安悪化とされる集団暴行事件

『水没したところによくいた彼ら、素行は悪かったが気のいい奴も多かった。…ただ最近は異様でした。…犠牲者が出てしまったこと、残念でなりません』
~刑事課巡査A


―アイドルAの熱愛報道

『俺は見たんだ!あのアイドルが筋骨隆々な男と一緒に歩いているのを!何故かカメラが…証拠写真さえ、写真さえ撮れれば…!』
~芸能記者Ⅾ


―草野球チームの裏話

『地方の草野球チームだよ。還暦迎えたおっさんたちが楽しむ程度でやってるもんなんだが…どうも今年の草野球は異様な感じでさ…。人じゃないのも混じっていたように感じるんだよ』
~草野球ファンの一人


―奇妙な訪問販売者

『不審者、というわけじゃないんだがおかしい感じがする訪問販売者がいてさ。先日見かけた時には一人しかいないはずなのに三人分の視線を感じたんだよ。霊感はないんだよ、俺。でもさ、そう感じたんだ。』
~訪問販売者レビュー


―各地に根付く木の芽

『ここに赴任してからしばらく経つが、今年に入ってから同じ木の芽をよく見かけるんだよ。なんだか懐かしいし不思議な感じがしたよ』
~在日米軍兵士A


―自分の影におびえる者

『影が女の形をしたり男の形になって俺を殺そうとする!た、助けてくれ!俺は影に憑り殺されてしまうんだ!』
~錯乱する患者


―療養施設における不審死の続発

『一時期、北杜地方における療養施設内の死者数が急増しています。事故によるものも増えていますが、施設内において顕著です。…人為的なものと私は考えています。』
~先日死去した警察関係者


―名乗りを上げる武士の霊

『どこにでも幽霊は出るものだけど、名乗りを上げる武士の幽霊ってなかなかないよな。日本の幽霊って基本名乗らんだろ…』
~オカルトサイトの書き込み


―型破りな弁護士の活躍

『今年に入ってから奇妙な案件が多くありましたが、困難な事例にも関わらずしっかりと解決に導く彼の手腕は素晴らしい。後に続こうと思う者が出てくるのもわかる気がします。』
~弁護士専門紙のコメント


―校舎爆発事故

『学び舎が壊れてしまったことは悲しく思います。早く同級生と一緒に勉強したいですね』
~在校生C


―風変わりなお客さん

『先日、人当たりの良いおじさんがチーズケーキを購入していったんですが、ふとみたらもういないんですよね。売ったのは確かだし、また買いに来たので身のこなしの良さがすごいなぁと思いました』
~菓子店従業員B


―吸血鬼女子高生とカラクリ忍者娘

『天才肌なあの子は実は吸血鬼で、ポニテが素敵なあの子は実はカラクリ忍者娘…なーんて妄想してみたり。あー、早く授業おわんねーかなー』
~授業中妄想しがちな男子E


―麻雀談義

『俺が喧嘩を吹っ掛けたらいつの間にか麻雀で勝負をしていた。訳が分からねぇ…しかも負けちまった…俺の…金…』
~チンピラC


―首都の地下伝説

『首都の地下には秘密基地があるとか埋蔵金があるとか氷漬けの美少女がいるらしい』『草』『そんなありきたりなものあるわけねぇだろ』
~オカルトサイトの書き込み


―化学工場での噂話

『知り合いから聞いた怪談なんだけどさ。なんかあそこの化学工場、幽霊が出るらしいよ?やんちゃな人が何人か髪の毛真っ白になって発見されたんだって!こわいよね~』
~中学生B


―湖畔での集団心理における混乱事例

『ここは元々霧が濃いですから。何かと見間違うことも多いんですよ。…ただ、ここまで被害が出てしまうとは』
~湖畔キャンプ管理者B



きな臭い事件や事故、噂話の出所を怪訝に思う者もいたが日常が疑問を押し流す。


ごく少数、明らかにしようとした者もいたが拡散されることもなかった。




『過去の人間を現代に呼び出して戦争?何言ってんの?』




荒唐無稽なそれらが信じられるはずもなく。


人々の日常はいつも通り流れてゆく。


その年は事故や災害が多かった。ただそれだけだと。











聖板戦争は終結した。



誰が聖板を手にし、

誰が望みを叶え、

誰が破滅に陥ったか。



それはわからない。



これは数ある可能性のエンディングの一つ。

各々の結末は各自に委ねられた。